お口の中は細菌のパラダイス
いきなり衝撃的なタイトルですが、これは決して大げさな言い方ではありません。
成人の口腔内には常時700種類もの細菌が生息していると言われ、歯を磨かない人では4000億から6000億程度、よく歯を磨く人でも1000億から2000億程度の細菌が住みついているとされているんです。
この細菌の中には健康な口腔内に存在する常在菌はもちろん、虫歯の原因菌であるミュータンス菌や歯周病の原因となる歯周病菌などの病原細菌も含まれています。
オーラルケアを怠ると・・・
人の口腔内は、分泌される唾液によって常に病原菌が洗い流され清潔な状態を保っているのですが、睡眠中はその分泌が極端に減るため、虫歯菌や歯周病菌をはじめ様々な病原菌が繁殖しやすくなってしまいます。
1日の中で最も口内細菌が多くなるのは起床直後と言われていて、「今日はもう眠たいからもういいやー」ってちょっと歯磨きをサボるだけで、寝ている間これら口内の細菌は増え、虫歯や歯周病になりやすくなります。
30代以上の日本人の内80%が程度の差こそあるものの、歯周病に罹っているというデータもあるくらいです。
しかも、この歯周病は歯の健康だけでなく、糖尿病や心臓病、脳梗塞を引き起こすリスクがあるので要注意です。
予防歯科という考え方
これまで日本の歯科治療は、虫歯や歯周病などの具体的な症状が表れてから歯医者に行って治療するという考え方が一般的でした。
しかし最近では、「悪くなる前に対策を打とう」という予防歯科の考え方が広まりつつあります。
どんどん生え変わる髪の毛とは違って、成人の歯は「永久歯」が替えの効かない言わば一品ものです。一度虫歯の治療で削った歯は二度と元の状態には戻りませんし、いよいよ虫歯や歯周病でダメになって抜歯ということになってしまうと、もう二度と生えてきません。補うには入れ歯やインプラントなどの人工歯を歯の代わりに入れる他ないのです。だからこそまだ大きな問題を生じていないうちに適切なケアを始めることが大切です。
適切なケアを定期的にしてあげることで、ある時一気に歯にガタが来て、気付いた時には入れ歯や差し歯だらけ…なんていう悲しい未来を防ぐことができるのですから。
ご存知ですか?歯の曲がり角
シミやシワが出現しやすくなる「お肌の曲がり角」はご存知だと思います。30代というのはそれと同じように口内にも「老い」が忍び寄ってくる年代でもあるんです。
「歯の曲がり角」とも言えるこれらは、歯肉が痩せはじめ歯茎が下がってくるためモノが挟まりやすくなるので、これまで以上に丁寧なオーラルケアを心がける必要がでてきます。
10代や20代の頃のように「虫歯ができたら歯医者に行く」という意識では将来にわたって健康な歯を維持していくことは難しくなります。
食べかすとプラーク(歯垢)、歯石の違いとは?
食べかすは食後8時間程度かけて口内細菌によって分解され、やがて黄白色を帯びた粘着性のプラーク(歯垢)が生成されます。このプラーク1mgには1億個以上の細菌が存在しています。さらに時間が経つと今度は唾液中のカルシウムやリン酸と反応して石灰質の歯石となります。プラークや食べかすであれば歯ブラシやデンタルフロスで除去できますが、歯石になってしまうとセルフケアで除去することは困難になり、歯科医院での処置が必須となります。
オーラルケアの方法
セルフケア
セルフケアで最も大事なことはやはり歯磨きです。しかし、歯磨きだけですべてのプラークを取り除くことは難しく、ある調査では歯ブラシ単独では約60%程度しか除去できていなかったというデータもあります。
デンタルフロスの活用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間に詰まったプラークを落とし切ることはできないため、そんなときには、デンタルフロスも活用するようにしましょう。
デンタルフロスには持ち手のあるY字型タイプと、長さが調整でき、より細かい動きができるロールタイプの2タイプがあります。
デンタルフロスの使い方
1.まずはフロスを左右に動かしながら、ゆっくりと歯と歯の間に挿入してください。
2.歯茎と歯の境目までフロスが届いたら、今度は歯に沿って上下左右に動かして歯垢(プラーク)や食べカスを絡めとってください。
3.フロスを歯間から抜く時も、挿入時と同じようゆっくりと左右に動かしながら優しく抜いてあげましょう。
デンタルフロスを併用することでプラークの除去率が、30%もアップしたというデータがあり、セルフケアの仕上げに最適なケアアイテムと言えます。
歯科医院でのケア
どんなに丁寧にケアをしても、セルフだと磨き方の癖などがあるため完全にプラークを除去することは難しいものです。
そんなときはプロにお願いするのもありです。
歯のクリーニング
歯科医院で行われる歯のクリーニングには保険内で行われるものと自費で行われるものに分けられます。簡単に言うと、歯周病などの治療目的で行われるものが前者で、予防目的で行われるものが後者となります。
自費治療で行われるクリーニングは、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれています。
PMTCを日本語で訳すと「プロが専用の道具で行う専門的な歯のお掃除」という意味になり、歯医者専用の歯の研磨マシンを使って、自分では取りきることができないプラークや軽い着色汚れを徹底的に除去することができます。
今のオーラルケアが将来の自身の健康へとつながる
30代というのは、オーラルケアにおいて今後20年の歯の寿命、ひいては、全身の健康問題までを見通す上で大切な時期。80歳になっても20本の自分の歯を保っていられるためにも、是非、今の時期に生涯に渡って信頼のおける歯科医師を見つけて適切な指導と処置を受け、そしてしっかりとした歯のセルフケアを心がけるようにしていきましょう。