近年大変注目を集めている「再生医療」
再生医療とは、もともと我々人間に備わっている自然治癒力を最大限に活かす治療です。主に培養増殖した幹細胞を体内に移植することで、機能的・器質的に損傷を受けた臓器や組織の改善や修復を目指す医療です。これまでの治療法では治療が難しいとされてきた疾患に対する治療法としても大変期待されていて、臨床研究が盛んに行われています。
再生医療に欠かせないのが、人間が持つ幹細胞です。幹細胞は、体内が通常のときには活動しないのですが、ほかの細胞が損傷したり減少したりすることで、それらの細胞の代わりとして働こうと活動を始めます。
幹細胞治療とは
再生医療の1つである幹細胞治療は、幹細胞の持つ「自己複製能」「多分化能」の二つの能力を活かし、傷ついた臓器や血管、老化した皮膚などのさまざまな修復・再生を行うことが可能な治療です。培養幹細胞治療では、この幹細胞を培養して数を増やし、それを患部に注入、または静脈注射(静脈点滴)などを行います。幹細胞は骨髄から採取する方法と皮下脂肪から採取する方法がありますが、骨髄幹細胞に比べて脂肪幹細胞の方が患者さんの身体への負担が少ないことから、現在は脂肪幹細胞治療が多く行われています。
脂肪幹細胞治療の効果
脂肪幹細抱を体内に投与することで、病気の原因となっている臓器やダメージを受けた部位などの患部へ幹細胞が移動し、患部へたどり着いた幹細胞の働きによって、炎症が抑えられたり修復再生が促され、治療効果があると考えられています。
スポーツ医療の症例
アスリートにとって、怪我やその手術というのは選手生命に関わる問題です。従来の方法では一定期間の安静が必要でした。しかし、再生医療で治療すれば治療期間を短縮することができ、早期復帰が可能となるのです。
海外では多くのプロスポーツ選手やアスリートが再生医療を受けています。アメリカのメジャーリーグで活躍する有名選手もひじの治療を受け、故障者リストに載ってからわずか1か月足らずで手術することなく復帰を果たしました。プロゴルファーの有名選手は、ひざのけがの際、関節の再生治療として自身の幹細胞を注入し、結果を出しています。
痛みや辛い症状に悩んでいたりあきらめていた人にとって、福音となる治療法。それが再生医療、幹細胞治療なのです。
期待できる効果
●患部の修復・再生
慢性疼痛の緩和/脳梗塞/脊髄損傷の修復/肝硬変/糖尿病/関節リウマチ/アトピー性皮膚炎 など
スポーツなどにより損傷した靭帯や筋肉、ひざや関節の治療
●美容効果
細胞レベルでのエイジングケア
治療の方法
静脈注射(静脈点滴)
【対応疾患】糖尿病 | 肝臓疾患 | 脳卒中 | 脊髄損傷
幹細胞を利用した再生治療は、関節内や皮膚に直接注射にて行います。ただし、内臓など身体には直接注射ができない場所も多くあり、その場合は点滴による静脈注射を行います。静脈注射で血管に注入された幹細胞は全身を巡るので、直接注射ができない場所にある組織や臓器の修復、機能の回復を促すことが可能になります。
関節注射
【対応疾患】肩 | ひざ | 股関節 など
従来、肩やひざ、股関節などの痛みをおさえるには、薬の服用や、ステロイドやヒアルロン酸の注射しかありませんでした。こういった治療を行っても症状が悪化する場合、人工関節や関節鏡など身体への負担になる手術を受けざるを得ませんでした。「手術を受けたくない」または「手術が受けられない」という方は痛みと付き合いながら生活していくしかなかったのです。
再生医療によって幹細胞を培養、直接関節内に投与することで炎症をおさえて、擦り減った軟骨や傷ついた組織を修復・再生、痛みの改善が期待できるようになりました。
スポーツ障害・外傷
【対応疾患】肩腱板損傷 | 半月板損傷 | 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) | 膝靭帯損傷 | 肘内側(ゴルフ肘)上顆炎 | 肘外側(テニス肘)上顆炎 | オスグッドシュラッター病 | 肉離れ(筋断裂) | アキレス腱炎 | 足首靭帯損傷 | 手首の靭帯損傷 | 腱鞘炎 | TFCC損傷 | 足底腱膜炎
アスリートやスポーツ選手が怪我をすると、治療やリハビリに時間がかかり大きなロスに。また手術をすることになった場合、復帰までの道のりがさらに長くなり、引退せざるを得ないケースにもなります。関節や骨、筋肉、靭帯などの組織の修復に有効な、PRP療法や自己脂肪由来幹細胞治療を行うことで、組織の回復を早めて、早期復帰を目指すことができます。
脂肪幹細胞治療の安全性や副作用について
安全性
1)患者さん自身の細胞から分離・培養される細胞を使用するので、拒絶反応のリスクが少ない
2)皮下脂肪が身体表面に近い部分に存在するので、局所麻酔で比較的安全に採取できる
3)幹細胞の投与が静脈への点滴注入等で行われる
といった利点があり、患者さんの身体への負担が少ない治療法となっています。
副作用・リスク
大きな副作用はほとんど報告されていませんが、以下のような症状が起こることがあります。
1)脂肪採取の際:麻酔アレルギーや皮下出血、内出血、筋肉痛、発熱など
2)幹細胞投与の際:アレルギーや発熱、血液凝固能異常、肺塞栓など
身体への負担を抑えて痛みや症状を改善
今まであきらめていた痛みや辛い症状も、幹細胞治療なら改善できるかもしれません。
脂肪幹細胞治療は手術や入院の必要はなく、外来治療で対応することが可能です。
幹細胞治療を受けたいと思った方は、クリニックのドクターにカウンセリングを受けてみてください。しっかりカウンセリングで施術内容を把握することが治療の成功に繋がります。
執筆者:alluxe編集部