アミグダリンとはなにもの？

アミグダリンとは、ビワやアンズ、ウメ、モモなどのバラ科植物の未成熟な果実や種子の中の仁（じん）に含まれる青酸配糖体と呼ばれる物質です。
アミグダリンそのものには毒性はないのですが、摂りすぎると肝臓や腎臓で分泌されるβ-グルコシダーゼという酵素の一種であるエムルシンの作用により、最終的にベンズアルデヒド（杏仁豆腐やビワ酒の香り成分）とシアン化水素（青酸）に加水分解され、青酸中毒を引き起こすことがあるため注意が必要とされています。
未成熟な果実にもエムルシンは含まれており、果実が熟していくと共に、果実内のアミグダリンも減少していきます。完熟した果実を安全に食べることができるのは、同時に生成した青酸も時間と共に分解し無毒化するからということがわかっています。

アミグダリンの薬効作用

アミグダリンが加水分解して生じる青酸には、ごくわずかの量であれば呼吸中枢、咳中枢を鎮静する作用があることが古くから知られており、アンズの種であるキョウニン（杏仁）は咳や痰止めの生薬として用いられることがあります。
ただし、服用する場合は万が一の青酸中毒を防ぐために医師の指導のもと、用量・用法を守ることが肝心です。

アミグダリン≠ビタミン

かつて、アミグダリンをビタミンB17としてビタミンの一種としていた時期がありましたが、現在では否定されています。そもそもビタミンとは、日本ビタミン学界と公益社団法人ビタミン・バイオファクター協会によって、「微量で体内の代謝に重要な働きをしているにもかかわらず、自分で作ることができない化合物」と定義される物質です。
必須栄養素でもなければ欠乏症も報告されていないアミグダリンは、ビタミンとは別物として考えるのが自然です。

一時期は天然由来の抗がん剤として期待された

アメリカの生化学者がビターアーモンドの仁から抽出したレートリル（アミグダリンの別名）に、がん細胞の増殖を抑制する効果があるという説を唱えたことから、かつてアメリカやメキシコを中心にレートリルががんの治療薬として用いられた時期がありました。
ところが、その抗がん作用については、1980年代初めにアメリカ国立がん研究所によって「レートリルにはがんの治療、改善および安定化、関連症状の改善や延命に対していずれも効果はなく、むしろ青酸中毒をおこす危険性がある」とされ有効性が明確に否定されています。

現在ネット上には、「ビタミンの一種であり、アミグダリンの欠乏が癌や生活習慣病の原因となる」だとか、「アミグダリンはがん細胞だけを攻撃する安全な抗がん剤である」というように、明確な根拠のないアミグダリンの効果を謳っているものもありますので、安易にアミグダリン配合のサプリに手を出さないようくれぐれも注意するようにしてください。

（サクマユウナ）

執筆者：alluxe編集部