髪の毛の構造

髪の毛は、中心にあるメデュラと呼ばれる組織の周りを水分を含んだ繊維状の細胞であるコルテックスが取り囲み、さらにその外側をウロコ状に覆っているキューティクルからなる三層構造をしています。このうち最も内側にあるメデュラと最も外側のキューティクルには個人差はほとんどないのですが、間にあるコルテックスの量は個人差が大きく髪の太さや強さに影響を与えていることが知られています。
髪色はコルテックスに含まれるメラニンの種類と量によって決まるため、メラニンが大きく、量が多いと光を吸収して髪は黒く見えますし、その逆でメラニンがほとんどないと光を反射するため白く見えるというわけです。

髪の毛が染まるメカニズムとダメージの関係

ひとくちに髪を染めると言っても大きく二つのタイプがあります。
ひとつはヘアスプレーやヘアマニキュアのように髪の毛の外側を薄くコーティングして色をつけるもの、もうひとつは俗にヘアカラーと呼ばれるもので、髪の内部から色を入れていくというものです。

ヘアスプレーやヘアマニキュア

酸性染料と呼ばれる粒子が大きい染料が使われます。髪の内部まで浸透することはできないため、染まる範囲は髪の表面とキューティクルの内側まで。髪の毛内部のコルテックスには影響を与えないためダメージはほとんど生じないものの、一回のシャンプーで色が落ちてしまいます。

ヘアカラー

酸化染料とアルカリ剤を主成分とする1剤と酸化剤(過酸化水素)を主成分とする2剤を組み合わせて行います。まず1剤の中のアルカリの作用で髪の毛内部に薬剤が浸透して、髪の毛の色を決めるメラニンを破壊(脱色）します。そこに酸化染料が定着し、2剤の酸化剤の作用で発色、色が定着します。実は美容室などで耳にする「レベル(明度)」というのはこの1剤に含まれる酸化染料とアルカリ剤の割合のことを示していて、レベルが上がるほどアルカリ剤の割合が増え、染料の割合が減っていきます。俗にいう「ブリーチ」とはこのレベルが最大のもので、髪色を明るくするカラーの場合は多かれ少なかれブリーチ作用があるものと考えてください。「手軽に外人風ヘアが叶う」と謳われるイルミナカラーも例外ではありません。ヘアカラーは髪の中の成分(メラニン)を壊すため、ダメージは避けることが難しいのですが、その分ヘアマニキュアよりも発色や色持ちが良いことが特徴です。

色落ちすると髪の毛が赤っぽくなってしまうのはなんで？

ヘアカラーの染料はだいたい3ヶ月くらいかけて徐々に色が抜けていき、日本人の場合はやがて赤っぽい色になることが多いです。色が抜けても黒に戻らないのは、脱色によって黒色の素となるメラニンを破壊しているからです。

髪を傷めずにカラーすることはできないの？

これまでに紹介してきたことからもわかるように、カラーを入れるということは、それだけ「髪を傷めている」ということでもあります。しかし、工夫次第でカラーのダメージを抑えることは十分可能なんです。
ただ、どれだけカラーによるダメージを抑えられるかは、カラー剤そのものの性能というよりも美容師の技量によるものが大きいのが実情と言わざるをえません。 例えば多くの美容室のメニューにある髪が伸びた部分だけにカラーを入れる「リタッチ」も髪の毛の痛みを抑える工夫の一つです。
また、フルカラーをする際も、技量の優れた美容師であれば、髪の毛の新生部と色落ちした既染部で薬をきちんと塗り分けることで、フルカラーによるダメージを最小限に抑えることもできます。色落ちした既染部はすでに脱色されているため、改めて新生部と同じ強さのカラー剤で脱色することにメリットがないからです。 高いスキルを持った美容師と出会うことができれば、髪を傷めずにカラーすることも夢ではありません。

（サクマユウナ）

執筆者：alluxe編集部