江戸時代のトレンドは？

我が日本で、庶民がお化粧を始めたのは、江戸時代と言われています。記録として1813年（文化10年）に出版された『都風俗化粧伝』（みやこふうぞくけわいでん）という美容書が残っています。そこには洗顔方法をはじめとして、用途に応じた白粉や紅の塗り方、身のこなしや着物の着こなしまで記されていて、当時の最先端ファッション誌のようですね。

なんとそこには、『鼻の低きを高う見する伝』つまり鼻筋を通す方法や、『目の大いなるを小さく見する図』目を小さく見せる方法なども書かれていたのです。鼻筋はわかりますが、目は小さいほうがよいとされていたのは驚きですね。

米ぬかは定番洗顔料

今でも使われている米ぬかは、古くから愛用されてきました。『都風俗化粧伝』では「絹でふるった米ぬかをさらし木綿の袋に入れてお湯を含ませ、ぬかの汁で優しく洗顔すること」と書いてあります。「強くこすりすぎるのは肌が荒れる」との注意書きもあります。

米ぬかが肌に良い理由は、ビタミンを多く含んでいること。肌の代謝を促すビタミンB1、美肌成分のビタミンB2、老化を防止するビタミンEなどです。きめが細かくなってつやが出るという効果が。顔、体だけでなく、髪を洗うのにも使っていたそう。平安時代に書かれた『源氏物語』にも当時の女性が米ぬかを使用していたという記述があります。

セレブも虜に！ うぐいすのフン

米ぬかと並んで肌が白くなると当時人気があったのがうぐいすのフン。現代の感覚からはちょっとびっくりですね。もともとは歌舞伎役者や芸者さんなどのお白粉を使う人たちがお手入れに使っていたもの。その噂をきいた公家や武家などの身分の高い人たちや、商家の奥方の間で流行しました。
洗浄力が高く、肌を整える酵素が含まれているので、今ではなんとニューヨークの「Shizuka New York Day Spa」という高級スパでも使用されていて、セレブの人気が高いのだとか。

あずきの粉は美白の味方

こちらは奈良時代から使われており、「色を白くし脂垢を落とす」と言われてきました。洗浄作用の高いサポニンが古い角質を落として肌の生まれ変わりを促します。そしてあずきの細かい粒子が毛穴汚れをきれいにしてくれるので、ニキビ対策にもよいのです。

椿油で髪つやつやに

江戸時代、日本女性の命といえばその黒髪です。毎朝ツゲの櫛で長い黒髪をすき、結い上げないと外出できませんでした。椿油は高価なものだったので大奥で用いられていましたが、やがては江戸市民にまで愛用されるようになります。

古くから人々に愛用されているのが、実力の証。どれも自然由来のものなので安心して使えますね。そして化学的なことが解明されていない時代でも、当時の人たちがその効能を理解していた、というのが感心させられます。 いま一度、先人の知恵を見直して、伝統美容法を試してみるのもよいのではないでしょうか。

（佐藤マキコ）
執筆者：alluxe編集部