エイジングケアの美容医療は日進月歩。
美をめぐる人間の探求心は、情熱的に貪欲に、次々新しい治療法を生み出しています。
今回取りあげる「PPP」は、前回紹介したPRPと同様に自分の血液を使った美容医療です。
このふたつは、よく似た名前なので混乱してしまうかもしれませんが、実はまったく違う治療アプローチ。
PPPは再生医療ではなく、なんと血液を注入治療用のジェルに変えてしまうというとてもユニークな方法なんです!
まずは採血した血液を遠心分離機にかけて3層に分離。
人間の血というのは、血球(細胞)、血小板、血漿(液体)の3つの要素でできており、遠心分離というステップを経ることで、この3つの要素を振り分けることができるんですね。
ここまでは前回ご紹介したPRPと同じ工程です。
真中の少量の層が血小板を多く含むPRPですが、今回は図で一番上の黄色い部分、半透明の液体で細胞や血小板の少ない PPP(Platelet Poor Plasma) を使います。
Platelet Rich Plasma(PRP) の Rich(豊か) と比較して Poor(貧しい) で、これは血小板の含有量がとても少ない血漿だということを意味しています。
PPPは血液特有の成分がほとんど含まれない、いわば「毒にも薬にもならない」ただの液体。
このPPPをただ捨てるのはモッタイナイ!という貧乏性が働いたわけではないと思いますが、この毒にも薬にもならない、という特性を逆手にとった発想で誕生したPPPは、もし問題点が解決すれば、将来フィラー(注入)治療の中心に躍り出るかもしれない強力なポテンシャルを秘めています。
アレルギーの心配が少ない「プラズマジェル」
PPPを使った治療は、とても低コスト。
準備は、抽出したPPPに特殊な加熱処理をほどこすだけ。
しばらくすると……血漿は粘度のあるジェル状の物質に変化します。
これをプラズマジェルと呼びます。
プラズマジェルは自分の血液が原料となっており自分の体にとってアレルギーの心配がありません(※厳密にいうと熱処理によって変性しているのでゼロではない)。
これを、ヒアルロン酸やベビーコラーゲンと同じように、気になる部分に注射してふっくらもりあげる充填剤として使う……これがPPP注入治療法です。
もちろん、エイジングケアだけでなく、鼻筋やアゴなどヒアルロン酸プチ整形の定番部位に注入して顔の印象を変えることもできます。
(アラガン・ジャパン社 HPより)
※ヒアルロン酸注入イメージ。
PPPの大きな利点として、自己血液が原料なので、ヒアルロン酸やレディエッセ、ベビーコラーゲンに較べても、それほど費用をかけずに大量の注入剤を用意できることがあげられます。
同じくらいの費用でヒアルロン酸の約7倍の分量ができるので、施術次第で顔全体の印象を大きく変えることもできます。
よく似た治療法に、脂肪吸引した自分の脂肪を注入剤として利用する「脂肪注入」がありますが、施術の前提として脂肪吸引が必要になるのでお手軽さは雲泥の差がありますね。
PPPはこれからの注入治療における主役になれるか
自分の血液からできるので比較的お手軽に量が準備できる、かつアレルギーの心配がない、体内に異物を入れるという心理的バリアがないなど、他の注入治療に対しての利点は目立ちますが弱点もあります。
それは大きくふたつ。
・分子がやや大きくて硬い!
硬さを細かく設定して部位別に豊富な商品ラインナップを持つヒアルロン酸などに比べるとPPPは1種類。
分子はやや大きめで硬いので、小じわ、口元など繊細な部分への注入には向きません。
・体内への吸収スピードがめちゃくちゃ早い!
これはフィラーとしてはけっこうな弱点で、人によっては3カ月ぐらいで吸収されてなくなってしまうこともあります。
メリットとこれらの弱点を天秤にかけて、どちらがいいか慎重な判断が必要です。
この弱点を克服することができるかどうかがPPPのこれからを考える上で大きな課題となっています。
現在キットを開発している各メーカーが研究を進めているところで、もし将来このふたつがクリアできれば、美容医療のパラダイムが変わるくらい大きなインパクトとなるかもしれません。
PRPとPPPを組み合わせる
おすすめなのは、PRPとPPPを組み合わせて受けること。
PPPによるプラズマジェルは、血小板の成長因子によって肌の再生能力を高めるPRPの治療過程で作ることができるので、もともとワンセットの治療として同時に行われることも多いです。
PRPによる美容医療は、肌そのものを強く若々しく変えてくれる治療法ですが、一方で、即効性に欠けるという弱点があります。
プラズマジェルの注入治療なら、シワの下に直接注入してほうれい線や頬のたるみなど気になる悩みをすぐにその場で解決できるので、PRPの遅効性という弱点を補うことができます。
例えば、加齢によってこけた頬などは、老けて見える大きな原因です。
ヒアルロン酸などで頬全体をボリュームアップするのは大変高くつきますが、PPPなら一気に大量に注入できるので、それなりの費用でもふっくらとした若々しい頬を取り戻すことができるのです。
PPPが吸収される数カ月後には、今度はPRPに多く含まれる成長因子によって肌再生が働いているので、若々しく変わったという満足感は長続きすると思います。
組み合わせ施術なので費用はかかりますが、加齢による肌の衰えに悩んでいる人は要チェックです!
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